オヤノミカタブログ

株式会社オヤノミカタ 代表取締役 1978年生まれ。在学中にWeb制作を始め、その後、IT業界で活動。仕事中心のワーカホリックな生活から一転、子育て中心の主夫生活へと移行し、子育てにおける両端を経験。36歳で株式会社オヤノミカタ設立。滋賀県大津市在住。3児の父。

川崎市の少年事件から、「親」と「社会」の責任を考える。

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川崎市の事件、本当に心が痛みます。亡くなられた少年のご冥福を心よりお祈りいたします。

こどもを守ること、そして、こどもを犯罪者にしないこと、真剣に考えなくてはなりません。今後、こうした悲劇を減らしていくため、わたしたちにできることはいったい何でしょうか。川崎市の少年事件から、「親」と「社会」の責任について考えてみたいと思います。

「親は何をしていた」と問うべきか?

こうした少年事件が起こると、必ずと言っていい程、親の責任を問う声が上がります。加害者の親の「こどもをまっとうに育てる」という責任、また、被害者の親の「こどもを守る」という責任です。しかし、子育ての責任を親だけが背負わなければならないのだとしたら、それは非常にリスキーな世界です。

親である以上、こどもを育てる責任があることは間違いありません。しかし、実際にうまく子育てができなかった場合は、どうすればいいんでしょうか。そのようなケースも、当然、出てきます。これは、「親の自己責任」という言葉で片付けられる問題ではありません。最悪の場合、犯罪という形で社会に重大な影響をもたらしてしまうからです。

親の自覚を問うだけではなく、親だけでは不十分なケースも考えて、社会全体が親のセーフティーネットとして機能するほうが賢明です。たとえ、親がなんらかの課題を抱えているケースでも、社会全体でカバーして、それを補っていこうということです。

こどもが事件に巻き込まれてしまった際、「学校は何していた?警察は何していた?」という声が上がるのは、社会全体でこどもを守ろうとする表れだと言えます。それと同じような考え方が、犯罪者を生み出さないようにするためにも必要なのではないでしょうか。「犯罪者から守る」だけでなく、「犯罪者を作らない」ための社会的な枠組みが整備されていくことを強く望みます。

こどもを犯罪者にしないために、社会は何をすべきか?

上に書いたような考え方は、社会全体を1つの運命共同体として捉えたものです。皆、同じ社会の中で生きていく訳ですから、犯罪者を生み出さないことは総意のはず。「未成年に厳罰を課すべきかどうか」という制裁について議論することよりも、「こどもを犯罪者にしないために何をすべきか」という防止策に重きをおいて欲しいと思います。そちらのほうが建設的です。

では、社会がすべきことは、いったい何なのでしょうか。少年犯罪を考える際、その背景として、貧困との関係性がよく指摘されます。残念ながら、日本のこどもの貧困率は、徐々に上がってきています↓↓↓

子供の貧困率、最悪の16.3% 厚労省12年調査 :日本経済新聞

特に、母子世帯のような大人が1人しかいない世帯の貧困率は54.6%という高い数値で、非正規雇用者の割合も4割にのぼります。そうなると、親の子育て責任を求める以前に、こどもの貧困、非正規雇用、ワーキングプアなどの問題に取り組む必要があるということになります。

子どもの貧困をなくすためにできること。

わたしたちにできる具体的な例を見ていきましょう。

ひとりおかんっ子応援団プロジェクトについて | 大阪の病児保育・病後児保育 NPOノーベル

こちらは、ひとり親世帯をサポートする取り組みです↑↑↑ 病児保育を利用できれば、ひとり親でも、安定した職に就くことが可能となります。1,000円/月からの支援が可能で、7人が応援すれば、1世帯をサポートすることができます(2015年3月6日現在)。

STOP子供の貧困◇全国で無料学習支援塾の先生が熱かった◇動画まとめ - NAVER まとめ

生活保護世帯を対象とした無料学習支援を行っているNPOや自治体も多数あります↑↑↑ これは、貧困による教育格差をなくし、貧困の連鎖を食い止めるための取り組みです。

川崎の少年に鎮魂…まず子ども自身を見る行政・政治・地域へ | 上田令子(東京都議会議員江戸川区選出)

親やこどもを支援するために尽力されている政治家の方もいらっしゃいます↑↑↑ こういった方の後押しをすることは、こどもの貧困問題を解決する一歩となります。

子育ての問題は、個人の問題ではない。

貧困の問題は、そう簡単に解決できる問題ではありません。しかし、放置できる問題でもありません。精神的に追い込まれ、子育てから離脱してしまう親も出てきます。ネグレクトの問題です。また、怒りやストレスの矛先がこどもに向いてしまえば、虐待、モラハラといった問題に発展します。それらの結果として、非行に走ってしまうこどもも出てきてしまいます。

子育ての問題は、個人の問題ではなく、社会状況と密接に関係していることが多いです。上記の問題に限らず、育児ノイローゼ、いじめ、不登校といった問題も、親だけで解決できるものではなく、根はもっと深いところにあります。だからこそ、社会全体が親とこどもを暖かく包みこんであげなければならないと思うのです。

親がなんらかの課題を抱えている場合、「よその家庭に口を挟むべきではない」といって距離を置くのではなく、社会全体で責任を分かち合う姿勢が必要だと思います。たとえ、その親に至らない点があったとしても、それも含めて包み込むということです。そうすることで、はじめて、こどもを犯罪者にしない社会が実現できます。

親だって、子育てを通じて成長していく過程にある。

人生とは、失敗して、学んで、成長していく過程そのものです。親だって例外ではなく、子育てを通じて成長していく過程にあります。こどもが生まれたからといって、急に素晴らしい人格者になる訳ではありません。未熟なのは当たり前、至らないところがあるのも当たり前です。そこを理解した上で、いろいろな対策を考えていく必要性を感じます。

決して、親は子育てに責任を持たなくていいと言っている訳ではありません。ただ、社会全体で子育てをしていこうとする基盤があれば、どれほどの家庭が救われ、どれだけのこどもが非行に走らなくて済むか、ということです。

さまざまな社会的背景を考えず、「親の教育が悪い」、「親の責任だ」と、親だけに責任を背負わせてしまうのは簡単です。しかし、1つの運命共同体として、共に生きていく道を考えていくことが必要だと思います。「社会全体でこどもを育てる」という観念によって、悲惨な事件を1つでも減らしていければと強く願います。